1140.【小説】公園の亀趺 第9話
2025/01/11
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公園の亀趺
第9話
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まだ、武兵衛のお屋敷に亀趺ができる前のことである。
武兵衛は、近くの川に息子の武之助とその妹で娘のはると遊びに出かけていた。
「ぴちゃぴちゃ、おもしろいや!」
武之助は裸足になって、川の浅いところに足をつけていた。はるは武兵衛のそばで一緒に川を眺めるだけであった。
「深いところには、危ないから行くなよ。」
「はい、お父さん!」
武之助は父親の言う事をしっかりと守って、危ないことをしないよう忠実である。
こうやって、武兵衛たちは時々浅瀬に出かけるのであった。ちなみにこの時間は武兵衛の妻、つまり武之助やはるの母のきねは家で炊事をしていることが多い。
ある日のことである。いつものように武兵衛たち3人はお屋敷の近所の浅瀬に遊びに出かけたのだが・・・。
「お父さん!あそこ!」
はるが何かを見つけたようだ。
「亀がひっくり返ってるよ!」
武之助もそのことに気がついたようだ。
亀がひっくり返った状態となってしまい、動けないで困っている。
「武之助、亀さんを助けてやりなさい。」
武兵衛は、亀が好きな武之助にそう命じた。
「はい!」
普段は動きがゆったりしている武之助だが、好きな亀が困っているのでほんの数秒でひっくり返っている亀を元に戻してあげた。
「これで大丈夫だよ。気をつけてね。」
武之助は、助けた亀を気遣った。
「ありがとう。」
武之助には、何か声が聞こえた。
「あれ、亀さんがしゃべった!」
「そんなわけがないだろう。なぁ、はる。」
「はい。」
その声は、武之助にだけ聞こえたようである。
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つづく
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