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329.小説『ありがと~い!』第74話 イタリア人学生との遭遇に、ありがと~い!

2023/09/04

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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大井誠は、羅門くんと鶴咲の街並みを歩いている。

「そういや羅門くんは、なんでアメリカから鶴咲に来たんだ~い?」

「おれのroots、先祖が暮らした日本を改めて見つめ直したいと思ったんだ。家族はまだアメリカにいるんだが、単身日本にやってきた。おれ、アメリカ暮らしが長いが実は生まれは鶴咲なんだ。隠していたわけじゃないんだがな。」

「Oi!Oi!Oi!羅門くん、鶴咲生まれだったのか~い!」

「小学校まで鶴咲で過ごした。その後、家族で渡米し、中高を過ごした。そして大学で鶴咲へCome back、戻ってきたんだ。」

大井は、羅門くんの生い立ちについて知ることができ、興味深そうに話を聞いている。

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「運河を通行するゴンドラ、いつ見ても風情あるぞ~い!」

「ヴェネツル地区に来たな。ゴンドラは観光船なんでおれは乗ったことないんだが、Many times、何度も見たことがある。」

「オレも乗ったことないぞ~い!」

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「鶴丸子広場に着いたぞ~い!ヴェネツィアのサン・マルコ広場を参考に作られたってどこかで聞いたことあるぞ~い!」

「Exactly、確かにそうらしいよな。江戸時代にヴェネツィア出身のmerchant、商人のルイージ・モンテカンポ一行の尽力でこの鶴丸子広場はできたらしい。」

「ヴェネツィアの雰囲気に、日本の和の雰囲気が合わさって、独自の広場って感じだぞ~い!」

鶴丸子広場は、参考にされたヴェネツィアのサン・マルコ広場と同様、現在は鶴咲の観光スポットとなっている。

大井は、羅門くんとしばらく鶴丸子広場で談笑した。

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「すみません、鶴咲大学の学生ですか?」

ヨーロッパ系と思われる、大井や羅門くんと同年代の男性が声をかけてきた。

「そうですよ~い!どうしたんですか~い?」

大井は応答した。

「やっぱりそうなんですね!大学で見かけた方ですね。坊主頭が特徴的ですので、そうかなと思いました!」

大井は今日は黒のバケットハットを被らず、いつもの坊主頭を見せている。『ブレッドウィズベリー』の白に赤のワンポイントロゴのポロシャツに、『スーパイコ』の細身のジーンズ、それに黒革のローファーという風貌だ。

ちなみに羅門くんは、相変わらず白のTシャツに、半袖の季節ながら黒革のダブルライダースジャケットを羽織っている。暑そうだが、羅門くんは慣れているようだ。

「留学生の方ですか~い?」

「はい。イタリアのヴェネツィアにある大学から来ました、マルコです。」

その瞬間、大井は何かを思い出した気がした。だが、具体的には思い出せない。

「オレは大井誠で~す!もしかして、ブラッドオレンジジュース好きですか~い?」

「赤いオレンジジュース、好きですよ。でもなんで知ってるんですか?」

「あれ、なんでだろ~い!」

「それにしても誠さん・・・なんか聞いたことがある名前ですね。」

あの時のことを、部分的には思い出しているようだ。

「私、まだ鶴咲に来たばかりなんですよ。ヴェネツル地区、興味深いですね。私がいたヴェネツィアにそっくりです。」

「おれがguide、案内しようか?」

「それでは、お言葉に甘えます。」

「マルコクン、日本語上手ですね~!」

「ヴェネツィアの大学で日本語を学びましたから。ヴェネツル地区があることもあって交換留学協定を結んでいる鶴咲大学に来ました。」

こうして、大井と羅門くんは、マルコくんとともにヴェネツル地区を巡るのであった。

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つづく