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206.小説『ありがと~い!』第21話 声をかけてくれて、ありがと~い!

2023/07/12

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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大井誠は、ショッピングモール『カンミナーレ鶴咲』で買い物を楽しんだあと、家に帰るためのバスに乗っている。

「次は~、面上駅前~、面上駅前~。」

面上駅(つらかみえき)は、終着駅である鶴咲駅の次にある駅だ。鶴咲駅に比べるともちろん規模は小さいのだが、利用者はそれなりにOi!、もとい、多い。

駅前なこともあり、ここからバスに乗ってくる人々もそれなりにいる。

「(Oi!Oi!Oi!Oi!早速、満員バスになっちゃうか~い!?)」

始発のバス停である『カンミナーレ鶴咲』1階にあるバスターミナルから乗った大井は、座ることができた。しかし、その次の面上駅前バス停で多くの人々が乗り込んできたため座れる人は限られてきた。

「すみません・・・。」

ご高齢の女性が、大井に声をかけた。その瞬間、大井の趣味である人助けの気持ちが発動した。

「声をかけていただき、ありがとうございま~す!どうぞ~!」

大井は早速、この女性に席を譲った。声をかけられる前に気づいて譲るべきだったと反省しながらも、声をかけられたことに感謝した。

「どうもありがとう。もしかして学生さん?」

「は~い、鶴咲大学に通っていま~す!」

「私の孫も、鶴咲大学に通っているのよ。学部はどこかしら?」

「法学部の2年生で~す!」

「あら、私の孫も法学部の2年生よ!佐藤虹大(さとうこうだい)って知ってるかしら?」

なんと、偶然にもこのご高齢の女性は、大井の同級生・佐藤くんのお祖母様だった。

「Oi!Oi!Oi!Oi!Oi!お祖母様!?」

大井は、驚きのあまりいつもは心の声におさめるOi!連呼を声に出してしまった。

「びっくりさせちゃったわね。虹大のお友達みたいね。仲良くしてあげてね~。」

「佐藤クン、今日も体調を心配してくれて、いつもお世話になってま~す!お祖母様にも、ありがとうございま~す!」

この後もしばらく、大井は、佐藤くんのお祖母様と会話を繰り広げた。

...

「次は~、金太郎町~、金太郎町~。」

「それじゃ、私はここで降りるわね。虹大の大学での話を聞けて良かったわ。」

「こちらこそ、お祖母様とお会いできて良かったで~す!」

「また、どこかでお会いするかもしれないわね。虹大を、これからも大学でよろしくね。」

「は~い!ありがとうございま~す!」

こうして佐藤くんのお祖母様はバスから降りていった。

金太郎町は大きな住宅街であり、ここで降りる人はOi!・・・、くどいが、もとい、多い。バスはすっかり空いてきたので、大井は再び、佐藤くんのお祖母様が座っていた席に座った。

「(佐藤クンのお祖母様、いい人だったぞ~い!佐藤クンも、お祖母様譲りのいい人だぞ~い!)」

こうして大井はまた、バスの席に座ってゆっくりするのであった。

...

つづく