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189.小説『ありがと~い!』第14話 鶴咲に来てくれて、ありがと~い!

2023/07/05

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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大井誠は、自身が住む家の近くにある冨吉電停から乗った路面電車に揺られている。

鶴咲は、異国情緒溢れる街並みに加えて、平和を伝える都市としても知られており、世界中から観光客が訪れる。

路面電車に乗っている人々も様々な人々がおり、人々の多様性を感じることができる。

「(Oi!Oi!Oi!あの人たち、困ったような仕草をしているぞ~い!)」

大井は、ここでも趣味の一つである人助けが発動しそうだ。50代くらいの海外から来たと思われる男女2人が何かお困りのようだ。

「Hi, may I help you?(こんにちは、お手伝いしましょうか?)」

大井は英語に関心がある。いろいろとアメリカやイギリスなどの文化を調べているうちにイギリスのOi!文化を知ることとなり、自分の苗字と同じ発音なこともあり親近感を抱いたのだ。海外に行ったことはないのだが、日常会話程度であれば英語で会話することができる。

「Ah, thanks! I'd like to enjoy champon, but I don't know which restaurant is recommended.(ああ、ありがとう。ちゃんぽんを食べたいのですが、どのお店がおすすめかわからなくて・・・。)」

このお二人の、男性のほうがこう尋ねた。

「I recommend "Casa di Luigi", which is the most famous champon restaurant chain in the world.(『カーサ・ディ・ルイージ』がおすすめです。世界で最も有名なちゃんぽんのチェーン店です。)」

『カーサ・ディ・ルイージ』は、ちゃんぽんの本場・鶴咲発祥のチェーン店で、現在は世界中に店舗を構えている。昨年、鶴咲にあるヴェネツル地区のモデルとなったイタリア・ヴェネツィアにも念願の初出店を果たすこととなった。

「I love the "Casa"! They're also in England. But are there any differences between the "Casa" in England and Tsurusaki?(ああ、「カーサ」好きですよ!イングランドにもありますからね。でもイングランドと鶴咲のカーサで何か違いってあるんですか?)」

お二人の、女性のほうが「カーサ」を知っていたようだ。

「They're different. You'll find the differences when you visit the "Casa" here, Tsurusaki.(違いますよ。ここ、鶴咲の「カーサ」を訪れる時には、その違いがわかると思いますよ。)」

「カーサ」は、国ごとに異なる雰囲気の店舗展開をしており、日本国内でも、本場鶴咲とそれ以外では雰囲気が異なる。「カーサ」ファンは、その違いを楽しんでいる。

「Really? We'll definitely visit there. Thanks a lot! What's your name?(本当かい?絶対行きます。本当にありがとうございます!あなたのお名前は?)」

男性のほうが、喜んでこう言った。

「I'm so glad to help you. I'm Makoto.(お役に立てて嬉しいです。私は誠です。)」

「Thanks Makoto-san. I'm Pete and she is my wife, Angela.(ありがとう、誠さん。私はピートで、妻のアンジェラです。)」

ピートさんは、本場の「カーサ」を食べたくてしょうがなくなり、アンジェラさんと満面の笑みを浮かべている。

「I like your lovely hairstyle!(あなたの髪型、かわいくて好きですよ。)」

アンジェラさんは、大井の丸坊主にしている髪型を気に入ってくれた。

「I respect Oi! culture in your country. That's why my hairstyle is like this, hahaha.(私はあなたの国のOi!文化をリスペクトしていて、こういう髪型なんです、ハハハ。)」

「Wow, really? Thank you for respecting our culture!(わぁ、本当ですか?私たちの文化をリスペクトしてくれて、ありがとう。)」

ピートさんは驚き、お礼を言った。

「My family name is "Oi", so I have a strong affinity for Oi! because of its name. Thanks a lot-Oi! to you too for visiting my country!(私の苗字は「大井」なのでその名称からOi!に強い親しみがあるんです。こちらこそ、私の国を訪れてくれて、誠にありがと~い!ございます。)」

「Hahaha, you're so funny and lovely. If you visit England, give us a message!(ハハハ、あなたはとても面白くてかわいらしいですね。イングランドを訪れることがあったら、連絡してくださいね!)」

アンジェラさんは、夫婦の連絡先が書いてあるカードを大井に手渡した。

「I hope you'll enjoy local champon in Tsurusaki. Have a nice trip!(鶴咲の地元のちゃんぽんを楽しめると良いですね。良いご旅行を!)」

「Yeah, we'll enjoy lots of champon! So, thanks a lot-Oi!, a nice greeting you made! See ya!(はい、ちゃんぽんいっぱい楽しみますよ!あなたが作った素敵な挨拶、ありがと~い!またね!)」

「Thanks a lot-Oi! See you in England!(ありがと~い!またイングランドでね!)」

こうして、ピートさん・アンジェラさんご夫妻は鶴咲平和公園電停で路面電車から降りていった。本当に気さくで人間味溢れるご夫妻だった。大井は、このような心温まるやり取りができることが好きなので、積極的に人助けをしている。

「(Oi!Oi!Oi!Oi!オレの英語版ありがと~い!をマネしてくれるなんて、なんて気さくなご夫婦なんだ~!いつかイギリス行きたいな~!イングランドはもちろん、スコットランドにも行ってみたいぞ~い!)」

大井を乗せた路面電車は、まだまだ進んでいく。

...

つづく