165.小説『ありがと~い!』第2話 大家サン、ありがと~い!
2023/06/23
※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。
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大井誠は、今朝も大学へ向かうために、アパートを出た。勢いよく外出したのは良いのだが、この後よく起こることがある。
「おはよう、大井くん!忘れ物はないかい?」
こう挨拶したのは、大井が住んでいるアパートの大家さんだ。60代くらいの男性で、鶴咲に来た大井を見守っている。今は、アパートの入口付近を掃除している。
「大家サン、おはようございま~す!忘れ物は、ダイジョ~ブだと思いま~す!」
語尾を伸ばすような話し方が、大井の特徴だ。
「おお、そうかい。カバンの中身、ちゃんと確認したかい?今日もお気をつけて!」
大家さんは、笑顔で大井を送り出した。
「・・・。あれ、財布がな~い!」
大井は、今日も忘れ物をしそうになった。財布がカバンの中になかった。ちなみに大井のカバンは、シンプルな黒のリュックサックだ。
大井は、慌てて家に戻り、財布を探した。今は8時20分。大学の授業開始は8時50分だ。大学へは徒歩10分でたどり着くのだが、なかなか焦る時間帯だ。
「Oi!財布ないじゃないか~い!」
大井は財布の場所を必死に思い出している。探すこと約10分。
「ここにあったんか~い!」
大井は、本棚の中に財布があるのを見つけた。昨日読んだ本と一緒に本棚に収納してしまっていたようだ。
現在、8時30分。授業にはまだ間に合うのだが、焦りが強くなってくる。大井は急いで外出した。
「大家サン、ありがとうございま~す!」
「はいよ、今日も気をつけてね~!」
大井は大家さんにお礼を言って、大学へと向かっていくのであった。
「(大家サン、ありがと~い!)」
いつもの決め台詞を、心のなかで呟きながら。
...
つづく
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