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162.小説『ありがと~い!』第1話 オレは、感謝することが好きだ。

2023/06/22

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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異国情緒のある歴史的な街並みから、観光地として人気がある街の一つ、鶴咲。この街にも、他の街と同様様々な人々が生活をしている。

鶴咲大学法学部2年、大井誠(おおいまこと)も、その1人だ。故郷を離れ、大学に入学してから鶴咲に住んでいる。

大井の趣味は、感謝することだ。この世は、感謝できることに溢れている。こうやって人々が当たり前に生活できていること自体も、ありがたいことである。

「今日もぐっすり眠れたことに、ありがと~い!」

おっと、大井が起床したようだ。「ありがと~い!」とは、大井の口癖である。「ありがとう」と自身の名前である「大井」をかけ合わせて大井が言い始めた造語だ。とはいえ、言う場所には気をつけているので、この言葉を使う時は主に独り言としてである。

「こうやって照明が点灯できるのも、電気を供給してくれている人々のおかげ、ありがと~い!」

「水道から水が出るのも、水道を整備してくれている人々のおかげ、ありがと~い!」

「昨日コンビニで買った朝食、作ってくれた人、それをコンビニまで運んでくれた人、そしてコンビニの店員さんなど、皆さまに、ありがと~い!」

こうやって、感謝できることを探しては「ありがと~い!」と独自の言葉で感謝を表現するのが、大井の趣味なのだ。

「オレは、感謝することが好きだ。ありがと~い!」

大井は、自分の苗字と同じ表記なことから、イギリス発祥のパンク・ロックのジャンルのうちの1つであるOi!に親しみを感じていることから、そのジャンルを愛好する人々をリスペクトし、自身も坊主頭にしている。ただし服装はそうでもなく、基本的に黒いTシャツに青いジーンズ、白いスニーカーというシンプルなファッションだ。そしてパンク・ロックも詳しいほうではない。

「Oi!Oi!Oi!」

Oi!とは、もともと挨拶として使われていた言葉らしく、日本でも「おい!」と呼びかけることがあるので、そういう面でも、大井は親しみを感じているようだ。

「よし、今日も一日、がんばろ~い!」

こうして大井は、家を出て大学へと向かうのであった。

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つづく