山田隆一公式サイト

146.小説『今日も、僕は歩いていく。』第13話 亀んまちアーケードの、ストリートピアノ。

2023/06/14

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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この前のアジフライ、美味しかったなぁ。どんどんご飯が進んでいった。ただ、3尾のうち1尾は、揚げすぎてしまい香ばしすぎるものとなってしまった。まぁ1尾はおまけだったから、よしとしよう。

今回仕事で取り掛かっているWebサイトは、比較的大型なので時間がかかる。じっくりと取り組もう。ということで、今日も息抜きで亀んまちアーケードに散歩に来ている。

やっぱり鶴咲の中心部なだけあり、このあたりはいつも人通りが多い。老若男女、さらには世界各国の様々な人々が、今日もこのアーケードを歩いている。

「この前、うちの子がねぇ~」

「何を食べようかしら」

「部長、お疲れ様です!」

「Excuse me, where's the station?(すみません、駅はどちらですか?)」

亀んまちアーケードでは、このように様々な会話が聞こえてくる。この社会にはいろいろな人がいて、いろいろな人間模様があることをこのアーケードだけでも垣間見ることができる。

僕の持論だが、誰であっても演出次第で小説や映画、ドラマにできるような出来事を体験していると考えている。自分ではなかなか気づきにくいが、それぞれの人々が、それぞれの独自の人生を歩んでいるので、それは他者の視点からは興味深いものに映る可能性がある。

「~♪」

お、ストリートピアノから音色が聞こえる。誰が演奏しているかはわからないが、この演奏は聞き入る。なんというか繊細さを感じる。

「~♪ ~~~♪ ~~~~~~♪」

何の曲かわからないが、すごく聴いていると落ち着く曲だ。もしかして、この方が自分で作ったのだろうか。

ああ、なんていい曲なんだ。僕は無意識に目を瞑って、演奏に聞き入っていた。

「~♪」

この曲が終わると、そこには人だかりができていて拍手が沸き起こっていた。さて、誰が演奏しているのだろうか。この繊細な演奏は、華奢な体型の女性のものだと想像しているが、いかがだろうか。

「お聴きいただきまして、ありがとうございます!」

ご挨拶をしたこのピアノを演奏していた方は、50代くらいの恰幅の良い男性だった。力強い演奏をしそうな方に見えるが、演奏は繊細で落ち着きを与えるものだった。ギャップが素晴らしい・・・。

後の話によると、この方はとある自治体の職員で趣味でピアノをやっているそうだ。趣味ながらもこれほど人々を魅了する演奏ができるのは素晴らしいことだ。

今の僕はピアノを弾くことはできないが、こうやって披露する機会が気軽にある現代なので、挑戦してみるのも良いかもしれない、と思いながらいつもの亀んまちアーケードを散歩していくのであった。

...

つづく