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140.小説『今日も、僕は歩いていく。』第10話 路面電車、の人々。

2023/06/11

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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僕が乗っている路面電車は、鶴咲平和公園電停を通り過ぎて、終点の青原に近づいていく。

「次は、鶴咲電鉄車庫前です。」

この路面電車の運営会社である鶴咲電鉄の車庫がある建物は本社ビルでもあるため、こちらで路面電車のことをいろいろと管理している。そしてこの電停で、運転手が交代しがちだ。

20代くらいのまだ新人と思われる運転手の方から、50代くらいのベテランの運転手の方にバトンタッチした。運転手の方をはじめとする、この鶴咲電鉄で勤務している方々のおかげで路面電車が運行している。いつも、ありがとうございます!

「え、次は~~~~、鶴咲大学・・・です。」

どの電車でも言えることだが、ベテラン運転手の方のアナウンスにはなんというか、独特の味がある。駆け出しの頃は定まっていない型ができた感じがする。運転手の方にも一人ひとり個性がある。それを感じながら、安全に運転していただいていることを感謝している。

鶴咲大学は、このあたりで唯一の国立大学である。規模も大きいため、このあたりの地区は学生たちで賑わっている。

「今からなら間に合う、急ごう!」

お、学生たちが降りていく。大学の授業かな。お疲れ様です!僕は、年下である大学生たちにも、このように敬意を払う。年下を見下すような大人には、なりたくないものだ。

とある男子学生が、降りようとすると定期券入れをうっかり落とした。僕はすかさず、拾いに行って、手渡した。

「こちら、落とされましたよ。」

「あ、どうもありがとうございます!」

男子学生は、そうお礼を言うと、急いで路面電車を降りていった。いやぁ、20歳くらいだろうか。若いなぁ。僕は30歳になるが、10年違うと、だいぶ変わるもんなんだろうなぁ。

「え、つ~ぎ~・・・は~~~~、冨吉~、冨吉・・・です。」

マイクを通して聞こえる渋い声に、ベテランならではの重みを感じる。

鶴咲大学電停からしばらくすると、冨吉(とみよし)にたどり着いた。冨吉、昔ながらの街並みで、味があって好きなんだよなぁ。今どきの都会的な街並みも好きだが、たまにはこうやって昔ながらの街並みを見るのも良いなぁ。

街並みは昔ながらだが、近くに大学がある学生街なので、若者が目立つ。よし、終点の青原電停から歩いて、久しぶりに冨吉にも行ってみようかな後で。

「え、次は・・・終点・・・、青原です。」

青原電停は、冨吉電停の次にある。青原界隈は、お店があるというより、住宅街となっている。終点ということもあり、かつて住宅開発が進んだのかもしれない。

やっぱり路面電車、良いなぁ。速度がゆっくりなので、街並みをある程度観察しながら移動することができる。車両もレトロな感じがして、味わい深いから好きだ。

こうして僕は、路面電車を降り、青原の街を歩き出すのであった。

...

つづく