130.小説『今日も、僕は歩いていく。』第5話 雨の中華街
2023/06/06
※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。
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今日は、鶴咲中華街に来ている。鶴咲には中華圏の人たちが移り住んだ歴史的経緯があり、中華街が形成されている。本場の人々が移り住んだため、本格的だ。この中だけまるで中華圏のような雰囲気を醸し出している。
そして今日の天気は、あいにくの雨だ。だが、小雨なので傘はさしていない。僕は、大雨ではないと傘はささない主義だ。帰宅してからシャワーを浴びればいいので、多少濡れても気にしない。
それにしても、雨の時は独特な匂いがする。見た目はもちろんだが、この匂いでも雨を感じる。食事をしにきたが、今日はたまには雑貨店も覗いてみるか。
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雑貨店『鶴咲公司』に入った。このお店は鶴咲中華街の中でも特に老舗であり有名店だ。入口には鶴をかたどった中華らしいオブジェがあり、観光客たちの撮影スポットとなっている。だが今日は雨なこともあり、人通りは少ない。亀んまちアーケードなど屋根があって雨の影響を受けない場所は、こういう時には強い。
この店にある、ボートの置物は名物だ。もちろん中華の要素もあるのだが、ヴェネツィアを模したヴェネツル地区がある鶴咲らしく、ゴンドラのような要素もあり、独自のボートとなっている。このボートは実際に存在したものではないらしく、このお店の初代店主が想像で置物だけ作ったもののようである。僕も前に購入し、家に置いてある。
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よし、飲食店を探そう。やっぱりここは、王道のちゃんぽんか。それとも皿うどんか、変わり種の新興勢力、鶴咲炒飯もアリかもしれない。
こうして僕は、鶴咲中華街の老舗中華料理店・『四神軒』に入った。
「お、いらっしゃい!何にしていくね?」店主の50代くらいの男性、楊(ヤン)さんが元気よく声をかけてくれた。楊さんは先祖代々、このお店の味を守り続けている。
「楊さん、こんにちは!それでは、今日はちゃんぽんをお願いします!」このお店の名物はやはりちゃんぽんだろう。ヴェネツィア出身で鶴咲で活躍した商人・ルイージ・モンテカンポが名前の由来となったちゃんぽんチェーン店『カーサ・ディ・ルイージ』のちゃんぽんがど定番で、鶴咲の地元民もカーサのちゃんぽんをおすすめするのだが、こうやってこの『四神軒』などそれぞれのお店のちゃんぽんも、それぞれ独自の味わいがあって個性があって良いのだ。
このお店は数々の著名人が訪れたことがあり、サインが並んでいる。往年の名優や歌手をはじめとし、近年人気のグルメ系ブロガーやYouTuberの名前もある。今も老若男女に愛されるお店だ。
「ちゃんぽん、お待ち!」
そうそう、これこれ。鶴丸がプリントされているかまぼこが入っているのが『四神軒』のちゃんぽんの特徴だ。豚肉や野菜の出汁が出たスープが麺によく絡む。ここの麺はモチモチ食感で美味しい。豚骨ベースのまろやかなスープも本当に奇跡の味わいといえよう。
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「楊さん、ごちそうさま!また来ます!」
「はい、いつもありがとね~。」
こうして僕は、『四神軒』を出た。外は相変わらずの雨だ。しかもさっきより雨がひどくなっている気がする。さすがの僕でも傘をさす基準にもうすぐ達する勢いだ。今日は、少し早歩きで家に帰ろう。
ゆっくり歩くのが好きな僕だが、こういう時にはたまには、早歩き。こういう日があっても良いじゃないか。
そんなことを考えながら、僕は今日も鶴咲の街を歩いていくのであった。
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つづく
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