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1175.【小説】公園の亀趺 第25話

2025/01/27

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公園の亀趺きふ

第25話

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今度は、とある冬の日である。

武杵園でも雪が降っている。

この日は特に寒い日なので雪は至るところに積もっている。亀趺の頭上も例外ではない。

「見て、亀さんが白いお帽子をかぶってるよ!」

とある男の子が亀趺を見てそう叫んだ。

「あら、亀さんも寒いのね。」

その母親と思われる女性が反応した。

「わたしのことを話してくれていますね。」

亀趺は心の中でそう考えた。

「でも今は冬だから、白いお帽子ばかりだ!」

男の子が、寂しそうにまた叫んだ。

「まぁ、白い雪を見られるのは今だけよ。」

母親がそう返事した。

武杵園の隅にはこの親子がいるが、園内の広いところでは他の子どもたちが雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり、様々な形で遊んでいる。

「ふふふ、ちょっと遊んでみましょう。」

亀趺は、心の中でニヤリとしながらそう考えた。

「お母さん、見て!亀さんのお帽子が青色になってるよ!」

亀趺に積もっている雪が、なぜか青色に変化した。今でこそかき氷のブルーハワイ味のような色、と説明できるのだが、この当時はそういったたとえはできない。

そして母親は振り返ったが、

「いいえ、何も変わってないじゃない。」

振り返った瞬間、雪はもとの白い色に戻った。

「あれ、おかしいな・・・。」

男の子は不思議そうな顔をしている。

「あ、これは!」

次に、男の子は手頃な大きさの木の棒を見つけた。

「これは雪だるまに使えるぞ!」

「よかったわね。」

こうして、親子は家へ帰っていった。

「ただいたずらしただけじゃ悪いから、あの子にあげましょう。」

手頃な木の棒を登場させたのも、やはり亀趺の仕業であった。

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つづく

ちなみに亀趺きふは実在するものであり、こちらの記事でまとめております。

長崎市の松森天満宮で撮影した、亀趺(きふ)と呼ばれる亀の形をした土台。