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1168.【小説】公園の亀趺 第22話

2025/01/24

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公園の亀趺きふ

第22話

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武杵園は完成した。

砂場や、人々が腰掛けてゆっくり過ごすことができる場所など、様々な憩いの場が設けられた。

「お魚さん!」

なつが、砂場で魚の形をした砂をつくった。

「かわいいお魚さんですね。」

遠くにある、武杵園の隅にある亀趺がなつの心に語りかけた。

「ありがとう!亀さんもつくろうか?」

「いいえ、その必要はありませんよ。」

「亀さんも、つくる!」

こうして、なつは引き続き砂場で作業を続け、亀趺の亀に似たようなまんまるお目々のかわいい亀を砂で作った。

「いやぁ・・・、かわいく作っていただいてありがとうございます。」

亀趺は、照れていた。

「なんだ、この魚と亀!」

近所の悪ガキ・和瑠井凶太わるいきょうたが現れた。そもそも珍しい苗字だが、それに加えて極めて珍しい縁起が悪い名前である。

とはいえ、凶太の評判は良くないがその両親の評判は悪くはない。そもそも凶太という漢字は凶太自身が勝手に名乗っており、本来は享太と書く。

「こんにちは。かわいいでしょう!」

なつは笑顔で凶太に挨拶した。

「こうしてやる!」

なんと、凶太は突然折角なつが作った砂でできた魚や亀を足で踏んづけて、壊してしまった。

「ひ・・・ひどい!」

なつは涙目になった。

「あ〜、すっきりし・・・」

凶太が清々しい気持ちとなった次の瞬間、砂場のところだけで猛風が吹いた。

「きゃあ!」

「うわぁ!」

二人は風で舞い上がったが、やがて風は止まった。

二人はなぜかゆっくりと地面に落ちていったので怪我はなかった。

砂場を見てみると、なんと魚と亀が元通りになっていた。

「びっくりするじゃないか!」

凶太は激怒した。

「あれ、砂に何か書いてるよ。」

なつは、砂場で新たに文字を見つけた。

<つぎやったらおもいこうらがふってきますよ>

この文字を読んだなつは、この猛風が誰の仕業かがすぐにわかった。

「ちくしょう、気味わりぃ!」

凶太は去っていった。

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つづく

ちなみに亀趺きふは実在するものであり、こちらの記事でまとめております。

長崎市の松森天満宮で撮影した、亀趺(きふ)と呼ばれる亀の形をした土台。