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1164.【小説】公園の亀趺 第20話

2025/01/22

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公園の亀趺きふ

第20話

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「壊してはなりません!」

その声は、はるにだけ聞こえている。

「あの、なにか、誰かが叫んでいる声が聞こえるのです。」

「そうかい?何も聞こえないぜ、はるさん。」

「俺も聞こえないよ。はる、疲れてるんじゃないか?大丈夫か?」

梅吉も龍之進もやはり聞こえていない。

「はるさんの心に語りかけています。」

その刹那、はるの表情が曇った。得体も知れない声が心に語りかけているとなると、そうなるものしようがない。

「驚かせてすみません。わたしはその、壊されようとしている亀です。はるさんも、心の中で考えたことを口を開けずともわたしに伝えることができますよ。」

梅吉と龍之進が談笑しているうちに、はるは亀趺から父・武兵衛や兄・武之助のことをいろいろと聞いた。武兵衛の生前、亀趺とよくやり取りをしていたことも知った。

「龍之進さんは、蕎麦は好きかい?」

「ええ、好きですよ。」

「隣村で食べた蕎麦が美味かったんだよ。」

「それは気になりますね。」

このような話を男二人がしているうちに、はるは亀趺の話を聞いている。

「武兵衛さまは、はるさんがお屋敷を離れてからも毎日はるさんのことを気にかけておりましたよ。」

「・・・。」

はるは、自身が嫁いだ後もなお溢れていた父の愛を知り、心が温かくなった。泣いてしまうと男二人に怪しまれるため、ぐっとこらえた。

「この亀さんは、残しておきましょう!」

そしてはるは、男二人にこう提案した。

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つづく

ちなみに亀趺きふは実在するものであり、こちらの記事でまとめております。

長崎市の松森天満宮で撮影した、亀趺(きふ)と呼ばれる亀の形をした土台。