1126.【小説】公園の亀趺 第2話
2025/01/04
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公園の亀趺
第2話
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「わたしですよ。」
「えぇ!?」
少年が驚くのも無理はなかった。そこにはやはり、誰もいないのだ。
「驚かしてすみませんね。しゃべっているのは、君がさっき撫でてくれたわたしですよ。」
「・・・!?」
少年は、驚きのあまり言葉が出ない。
声の主は、先ほど少年が撫でた亀趺なのだ。
「・・・しゃべれるの?」
少年は、まだ驚きを隠せない表情のまま、恐る恐る亀趺に語りかけた。
「しゃべれますよ。」
亀趺は、表情を変えずに返事をした。
「どうやってしゃべってるの?」
「直接、君の心に語りかけています。」
なんと、亀趺は心で会話をしているようである。確かに、表情が変わらなければ、口も動いていない。その丸い目と尖った口は、しゃべっている間もずっとそのままである。
「なんでしゃべれるの?」
「それはわたしにもわかりません。わたしをつくってくれた人なら、知っているかもしれませんね。」
「誰がつくったの?」
「君が生まれるずうっと前、君のお父さんや、君のおじいちゃんもまだ生まれていない、むかしむかしのことです。」
こうして、亀趺は遠い昔のことを話し始めた。
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つづく
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