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1124.【小説】公園の亀趺 第1話

2025/01/03

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公園の亀趺きふ

第1話

亀趺きふとは、石碑の土台になっている亀のような生物である。贔屓ひき覇下はかとも呼ばれている、中国の伝説上の生物である。贔屓という呼び方はその字面の通り、依怙贔屓えこひいきなどの贔屓ひいきという言葉の由来にもなったそうだ。特にこの生物が石碑の土台になった時に、亀趺と呼ばれるようだ。

亀趺は発祥の地である中国ではもちろん、韓国をはじめとする周りの国々にも見られる。もちろん、日本もその例外ではない。

とある公園の隅に、高さ1メートルほどの亀趺がある。いつ頃できたのか、想像もつかない。

亀趺の上にはやはり石碑があるのだが、その石碑に書いている文字はもはや一文字も読むことができない。それほどの年月を感じるのである。

しかしながら、その石碑の土台となっている亀趺はその年月を感じさせない、はっきりとした風貌をしている。

石碑の高さからすると数十センチほどの大きさの、公園の広さからするとこぢんまりとしたその亀趺は、丸みを帯びた甲羅で、丸い目をしている。

「あれ、亀さんだ!」

公園を訪れていた少年が亀趺を発見した。

亀が好きな少年は、すぐにこの亀趺に愛着が湧いた。そして亀趺の頭を少し撫でた。

「はじめまして!」

この言葉を発したのは少年ではない。しかし、この近くに少年の他には誰もいない。

「誰かいるの?」

少年は声の主が気になってこう尋ねた。

・・・しかし、誰も返事をしない。少年は、変だなぁ、という感情を示す表情をした。

「わたしですよ。」

「えぇ!?」

少年はその声の主に驚いた。

...

つづく