464.小説『おれたち、鶴咲サンクス!』第26話 ずっと心残りだった。
2023/10/27
※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。
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「ヨッシーに会いにきたのはもちろん久しぶりにヨッシーの演奏を俺が見たかったこともあるが、真の目的があるんだ。」
大藤教授が、真の目的を語る。
「真の目的・・・、何でしょうか?」
吉野教授が気になっている。
「さぁ、こっちに来てくれ!」
すると、吉野教授よりも更に紳士のような風貌をした白髪で痩せた体型のおとなしそうな男性がやってきた。吉野教授と同年代の60代ではあるものの、実年齢よりかなり老けて見える。
「あの・・・、どちら様でしょうか・・・?」
「吉野さん・・・あの時は申し訳ございませんでした・・・!」
その男は、泣きながら吉野教授に謝っている。
「・・・、どういうことでしょうか・・・?泣かなくても大丈夫ですよ。」
吉野教授は、落ち着いて対応している。
「かなり見た目が変わってしまったからな・・・、気づかないのも無理はない。」
大藤教授は、この男が誰かよく知っているようだ。
「大藤さん、この方は・・・どちら様でしょうか・・・?」
「ヨッシーもよく知っている人だよ。もっとよく顔を見てみてくれ。」
吉野教授はより注意深く、その男を見つめた。
「・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
1分ほど見つめると、吉野教授の様子が変わった。
「Oi!Oi!Oi!まさか・・・!」
吉野教授が、今までメンバーに見せたことがないような顔で驚いている。
「吉野サンまでオレの喋り方が乗り移るなんて、嬉しいぞ~い!」
「ヨッシーがこんなにsurprised、驚いているのは初めて見たぜ。」
「アタシもです!この方は誰なんでしょう・・・!」
鶴咲サンクスのメンバーたちが、見守る。
...
「ヨッシーダ!」
「はい・・・吉野さん、覚えていてくれたんですね・・・!」
なんと、その男は吉野教授がかつて青年時代に交流があった吉田宗幸だった。
「吉田は、メジャーデビューしたバンドがヒットを出せずに解散してから、生活に大変苦労したそうだ。当時のバンドメンバーすら消息がつかめない状況だったが、俺が東京に出張に行ったときにたまたま遭遇したんで話をした。かなり風貌が変わってたが、吉田かもしれんと思って声をかけたんだ。ヨッシーが鶴咲にいて、もうすぐ学園祭でライブがあることを伝えるとすぐに行きたいと言ってくれた。」
大藤教授の働きかけもあり、吉田は鶴咲に来てくれたようだ。
「吉野さん・・・、ずっと心残りでした・・・!勝手にあだ名を奪って、本当に申し訳ございませんでした・・・・・・・・!!!吉野さんに謝りたいと思いながらずっと生きてきました!」
吉田は、ずっと申し訳無さそうに泣きながら謝り続けている。
「・・・、顔を上げろよ、ヨッシーダ!」
吉野教授が、普段とは違う厳しい口調で吉田に言った。
「はい!」
吉田は反射的に顔を上げた。
「今のヨッシーダは、ヨッシーダではありませんよ!なんですか、吉野さんって!あの時のヨッシーダはどこに行ったんですか?」
「すみません・・・、ヨッシーノ。」
吉田は、恥ずかしそうにヨッシーノと呼んだ。
「ありがとう。久しぶりにヨッシーノって呼ばれましたよ。」
「ヨッシーノ・・・!」
吉田の悲し涙が、嬉し涙に変わった。
「あの時は私も若かったんです。ヨッシーっていうあだ名を盗まれたって思い込んでしまいました。あだ名なんて、誰のものでもないのに。なんなら、現在はヨッシーといえば多くの人々が某国民的ゲームのキャラクターを連想するでしょうし。」
吉野教授と吉田が会っていた1981年当時は、そのキャラクターはまだ誕生していなかった。
「今の私はなんとも思っていませんよ。それより久しぶりにヨッシーダと会えたことが本当に嬉しいです。今もヨッシーダがドラマーだったTHE GREEN STARSのレコード全部大事に保管して、時々聴いてますよ。いい曲たちなのに、現代は忘れ去られているのが惜しいです。サブスクで配信してほしいところですよ。」
「ヨッシーノ~!お~いおいおいおいおいおい・・・。」
「もう泣かないでくださいよ、笑顔で話しましょうよ。私の研究室に招待しますから、そこでこれからゆっくり話しましょう!」
こうして、40年以上ぶりに会ったヨッシーノとヨッシーダは、二人一緒に研究室に向かっていった。
...
「Oi!Oi!Oi!オレみたいな掛け声で泣いてて、面白いぞ~い!」
「大井・・・、お前、moved、感動しないのか?」
羅門のサングラスの中には、光るものが見える。
「アタシ、おじさんたちの友情の尊さを感じました・・・!」
「いやぁ・・・、なんか雰囲気ガラっと変えちゃってごめんね。」
「大藤さん、no problem、問題ありません。いいものを見せてもらいましたよ!」
こうして、鶴咲サンクスの初舞台となった学園祭は、感動的な再会で幕を閉じた。
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つづく
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