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449.小説『おれたち、鶴咲サンクス!』第20話 吉野教授の、秘密。

2023/10/21

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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吉野教授は、今日も鶴咲大学工学部で教鞭をとっている。建築学科で、街づくりについて教えている。

「それでは、本日の内容をレポートにまとめて提出してください。お疲れ様でした。」

現在受け持っている環境政策概論の講義が終わったようだ。

「吉野先生!」

鶴咲大学工学部1年の浦西栞菜かんなが今日も質問にやってきた。お気づきの方もいらっしゃると思うが、吉野教授がドラマーとして所属しているロックバンド・鶴咲サンクスのギター担当で紅一点・教育学部1年の浦西杏菜の実の妹だ。2歳年下なのだが、杏菜は2年浪人しているため同じタイミングで入学した。ともに東京から鶴咲にやってきて、現在は姉妹で住んでいるようだ。

「浦西さん、今日はどういうことが気になりましたか?」

吉野教授は、学生からの質問には真摯に回答している。

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「ありがとうございました!いつも姉がお世話になっております!」

「こちらこそ、お姉さんからはいろいろと学ばせていただいておりますよ。」

吉野教授は、本当に腰が低い。偉そうなところが一切ない。

「あ、最後にもう一つよろしいですか?」

「もちろん、大丈夫ですよ。」

「姉が言ってたんですけど、昔のTHE GREEN STARSっていうバンドのドラマーがヨッシーっていう名前で吉野先生によく似ているみたいです!」

「そうですか・・・。すみません、そのことはちょっと・・・・。」

「あ・・・、すみません、余計なことを聞いてしまいました!すみませんでした・・・。」

栞菜も、姉の杏菜と同じく真面目な性格だ。

「それでは浦西さん、来週もよろしくお願いします!」

「先ほどはすみませんでした、よろしくお願いします!」

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吉野教授は講義を終え、研究室に戻った。

本棚のとある場所を見つめた。そこには、THE GREEN STARSのメジャーデビューアルバムのLPがあった。

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つづく