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160.小説『今日も、僕は歩いていく。』最終話 長い長い坂を登った先の、絶景。

2023/06/21

※こちらのカテゴリでは自由な物語を書いていきます。こちらのカテゴリに書いてあることは基本的にフィクションです。登場する人名・地名・商品名などの名称は例外を除き架空のものです。

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今日は、鶴咲のシンボルの1つである鶴亀山に来ている。標高444mで、別名「しあわせ山」だ。「4(し)」を3つ「合わせ」た数字だからである。

この山に来たカップルは別れるというジンクスがあるが、そりゃあ統計的に別れるカップルはそこそこいる。この山に来て別れるカップルもいれば、末永く続くカップルもいる。それだけじゃないか、と冷めた目で見てしまうのはあまり良くないことなのだろうが、性格上しょうがない。

標高はそんなに高くないので、登山家などからすると山というより丘のようなものなのかもしれない。気軽に登ることができるので、ちょっときつめの散歩感覚だ。とはいえ、登り坂がそこそこ長く続くので油断してはいけない。

今日は曇りなこともあって気温はそれほど高くないのだが、水分補給など暑さ対策を十分に心がけてから登る。

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やっぱり登り坂は刺激があり、より運動効果の高い散歩ができるなぁ。登山という感じでは全くなく、しっかり整備された車道の脇にある広い歩道を歩いている。地元の学校の、遠足コースになりがちだ。子どもたちが大人数で歩いても問題ない道の広さだ。

バスやロープウェイで登ることもできるのだが、こうやって歩いて登ると登り甲斐があるものだ。だが今日暑すぎたら僕もロープウェイに乗ってただろうなぁ。無理は禁物だ。

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中腹広場にたどり着いた。ここには広い土地があるので、野外ライブなどイベントがよく実施されている。鶴咲を代表するスーパースター、岡山将道(おかやままさみち)が地元凱旋ライブを実施したことでも知られている。鶴亀山をモデルにしたとされる楽曲、『あの丘は見ている』は何度聴いても名曲だ。

また、遊具などもいっぱい置いており、いつも親子連れで賑わっている。子どもは、かわいい。僕もいつか家庭を持ちたいものだ。

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中腹から山頂までも散歩道が整備されている。だんだんと、鶴咲の町並みを見下ろすことができてくる。ロープウェイに何度も追い越されながら、僕は散歩道をゆっくり歩いていった。

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こうして僕は、鶴亀山の山頂にたどり着いた。地元のテレビ局の電波塔や、展望台がある。

あゝ、何度見ても鶴亀山からの鶴咲の街並みは美しい。上から見下ろす鶴丸子広場も本当にいいなぁ。朝早くに登りはじめたのだが、もう昼になりそうだ。標高444mとはいえ、ある程度時間がかかる。こまめに水分補給しながら登った。

長い長い坂を登って見た景色は、格別だ。バスやロープウェイを使って登ることもできるのだけれども、徒歩でゆっくり登ってきつい思いをした上で見るこの景色は一味違ったものなのではないか、と僕の主観だが思う。もちろんロープウェイを使って登った上での景色も綺麗なのだが、少し違うのかもしれない。

このことを、人生にも例えてしまう。もちろん楽に人生が送れるのであればそれに越したことはないのだが、ある程度苦労をした上で成功を手にすることがあれば、それは本当に格別な喜びを得ることになるのではないだろうか。

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そんなことを考えながら僕は展望台の景色を堪能し、帰りはロープウェイで移動しようと思い、ロープウェイ乗り場へと向かっていった。

その途中、気になる場所を見つけた。岩で固められた壁なので灰色なはずだが、一角だけ金色のように見える。これはどういうことだろうか。10cm四方くらい、金色に見えるのだ。

ロープウェイはもうすぐ出発する。このまま歩いていけば間に合うのだが、気になる・・・。いいや、次の便でと思い、僕はこの金色に見える一角に手を触れた。すると目を開けられないほどの光に包まれ、僕は目を閉じた。

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・・・。ここは、どこだ?

目を開けると、そこには見知らぬ風景が広がっていた。

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『今日も、僕は歩いていく。』シーズン1 完