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1350.【物議を醸している某書籍について】「困った人」ではなく、「困っている人」。【僕は発達でも、前向きに生きていく。第86回】

2025/04/18/

僕は発達凸凹でも、前向きに生きていく。紹介

※この記事での私の特徴は自閉スペクトラム症(ASD)や発達性協調運動症(DCD)当事者の特徴のうちの、ほんの一例です。全ての神経発達症(発達障害)当事者に当てはまるわけではなく、特徴は十人十色だということをご理解いただけると幸いです。また、このシリーズにおけるとは、が得意なことや強み、が苦手なことや困難を感じること、という意味合いで用いています。

本記事の著者による講演動画

こちらの講演会の資料など詳細は、こちらの記事をご覧ください。

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【物議を醸している某書籍について】「困った人」ではなく、「困っている人」。

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今回は、近頃インターネット上で物議を醸している某書籍に関してASD当事者として思うことを述べます。

職場の「困った人」に対する対処法などが書かれているとされる某書籍です。このような書籍が出版される事実に憤りを感じるとともに悲しささえありますので、本記事では某書籍とし正式なタイトルは書きません。書くだけで吐き気を催すほどです。

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どれだけ努力をしても、職場で適切に動けない人がいる

私はASD当事者としてこうやって記事を書いたり、様々な講演活動や執筆活動をしている者です。

同じASD当事者でも、その中で様々な特性があり、その特性は十人十色です。私は特に、「他人の行動に合わせる」「集団生活をする」という面で著しい困難があり、ほとんどの職場で馴染むことが難しいタイプの人間です。現在もこのような特性を持ちながら、自分の力で生きていけるためにいろいろな道を模索している立場です。

私はほとんどの人々が問題なくできることが、できないことがあります。職場などの集団生活で過ごすこととなるとそういったことが多々あり、どうしても人々に迷惑をかけてしまう場面があります。

かつて学校でも一人でできることには大きな問題がありませんでしたが、集団や班でいろいろと活動する上で困難がたくさんありました。

こういった私のような特性を持つ当事者の中には、どれだけ努力をしても職場で適切に動くことができない人々が少なからず存在するのです。適切に動けなかった際に、私は非常に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。ですが・・・努力ではどうしようもないこともあるのです。

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診断名で、人柄を一括りにすることの危険性

私はこうやってASD当事者として情報発信をする際は常々、「この診断名だからこういう人間」と診断名で人柄を一括りにすることは危険なことであることを述べています。

例えばASD当事者でよく言われることは「興味の幅が限定的」ということです。しかし、私は日々様々なことに興味を持っております。このブログに書いているカテゴリにも幅広さがあります。ですから、「興味の幅が限定的」という特性からはむしろ真逆です。

このように、同じ診断名だからといってどの人も同じ特徴とは限らないのです。

・・・話を某書籍に戻しますが・・・某書籍ではASD当事者を「ナマケモノ」の動物のイラストで表現しております・・・。動物のナマケモノ自体は悪くないのですが、そのような名前となっている動物に当てはめられることは全く気持ちの良いものではありません。

なぜ「ナマケモノ」なんでしょうか。私がいつも怠けていると言うことでしょうか。本当にありえない表現です。同じASD当事者にもいろいろな人がいることは先に述べたとおりですが、私が持っているだいたいのイメージではASD当事者は真面目で勤勉な傾向があり、ナマケモノとは形容しがたいものがあります。私自身も何か期限があるものは余裕を持って取り組むタイプですし、自分をナマケモノだとは全く思ったことはありません。

さらに、そのナマケモノが「すぐにキレる!」「異臭を放ってもおかまいなし」と某書籍では表現されているそうです。・・・本当に怒りしかありません。ASD当事者に対する偏見を助長するものでしかありません。私もASD当事者ですが普段は自分でも自信を持って言えるほど温厚な性格です。すぐにどころかめったにキレません。このような某書籍のようにあまりにもひどい内容でない限り、まずキレません。その某書籍についてすらも「キレる」というより冷静さを保ちながら淡々とこうやって文章を書いております。そして、毎日自身を清潔に保つことを心がけております。毎日入浴を欠かさずに、風貌も清潔感を意識することを忘れません。関わる人々に不快な思いをさせないように可能な限り努めております。

このような書籍でより当事者に対する偏見を助長することになれば・・・、こういった私のような一人のASD当事者の日々の積み重ねが真っ向から否定されたような気持ちになります。本当にがっかりです。

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「困った人」ではなく、「困っている人」。

もちろん、某書籍で言及されているような本当に悪意のある「困った人」が職場に全くいないわけではないでしょう。そういった人々が一定数存在してしまうことを私は否定しません。

しかし、職場で周りとうまくやっていくために人の数倍努力しなければならない特性の人々もいるのです。そういった人々は、毎日疲れ果てるような思いをしていてやっとついていっているのです。それでもついていけない人がおり、「困った人」扱いされるとなるとかわいそうでなりません。

某書籍に対する様々な反応を見ていると、<「困った人」ではなく、「困っている人」>という表現を目にしました。まさにその通りです。職場で周りの人々とうまくやっていくためにどうしたらいいかわからずに「困っている人」がたくさんいるのです。苦しんでいる人々がいるのです。

職場だけでなく、この世の中には実に様々な特性を持った人々がいます。ある分野は苦手でも、別の分野では大きな成果を出すことができる人もいます。職場で「困っている人」とされている人々も、その人に寄り添って適切に話を聞くなどをすると「大活躍する人」になる可能性もゼロではありません。

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某書籍に対する高須幹弥先生のYouTube動画

某書籍に対する反応の中でも、こちらの高須幹弥先生のYouTube動画で述べられている意見は私も共感することがたくさんありましたので、こちらでも共有いたします。

幹弥先生のYouTubeは今回のような真面目な動画から楽しい動画まで度々拝見しております。今回もありがとうございます。

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某書籍の騒動を、議論にきっかけに

私もこうやって某書籍が物議を醸したことによりこのように自分自身の思うことを書く機会を作りました。

他にも当事者たちをはじめとする様々な声を今回の騒動により拝見することができました。

私と同じく声を上げている当事者の人々の意見に触れることで、悩んでいるのは私だけではない、私は一人ではないと安心感を得ることができました。

本記事をお読みいただいた皆さまにとっても、私の一意見が考えるきっかけになったのであれば幸いです。

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お読みいただき、ありがとうございました。