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1305.【小説】或除者の独白 幼少期編 第28話

2025/03/28

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或除者あるのけものの独白

幼少期編

第28話

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もうそろそろ、私の今日のお話も終わりにしようと思いますが・・・。

私が学校で苦戦したことを象徴する体育のお話をまたいたしましょう。

皆さまは、シャトルランをした経験はおありでしょうか。あの、ドレミファソラシドが流れて体育館の端から端を行ったり来たりするアレです。

先にマラソン大会のお話をしましたので、もちろんシャトルランも私にとっての相性は最悪でした。・・・ある一点を除けば。

体力を温存しながら、効率よく走っていくことがうまくできませんでした。・・・というか他の子たちは教わらずとも自然に体力を温存しながら走る術を身につけられるものなのでしょうね・・・。それが私には本当にわかりません。人間関係を築く方法といい、他の人たちが努力をせずとも「自然に」身につけることができる能力のうち、私が身につけられない能力がいろいろあるようです。

さて、そんなシャトルランですが・・・。

毎年、クラスで最初に脱落していました。

マラソン大会のことが印象に残った方であれば、これは予想通りであることでしょう。

頑張って走るのですが・・・今思えばその「頑張る」のが良くないのでしょうね。力を抜いて体力を温存しながら走ることが当時の私には特にうまくできませんでした。・・・わざわざ今またアレをやろうとは思いませんが。

ある学年、私は毎年のようにクラスで最初に脱落しました。女子も含めたクラス全体で最初です。

「真田くん・・・真剣にやってるのか?」

当時の心無い教師がこのような棘々言葉を投げつけました。「真剣に」走りすぎて体力を温存できなかったからこそのこの結果だと、今は思えるのですが、当時はそこまで考えきれませんでしたね。

「・・・。」

「まぁいいや。そろそろ50回!みんな頑張れよ!」

何も言わない私に、教師はこれ以上何も言わずに他の子どもたちを激励していました。

だんだんと脱落者が増えていき、最後に二人が残りました。・・・おなじみ、寺石くんと馬杉くんです。やはりこの二人は運動神経抜群ですから、いつもトップを争っていましたね。

「馬杉くん!がんばって〜!」

「馬杉くぅ〜ん!」

やはり馬杉くんは人気が高いですね。女子たちがここぞとばかりの声援を送っていました。

「寺石、いいぞ!」

「寺ちゃん、その調子だ〜!」

この頃の寺石くんは、どちらかというと男子人気が強かったですね。

二人ともバテる気配もなく余裕な表情で走っていたのですが・・・、事件が起きました。

「あっ!」

馬杉くんが転んでしまったのです。女子たちが悲鳴をあげていましたね。

その結果、トップの記録は寺石くんとなりました。

「馬杉・・・ドンマイ!そういうときもあるさ。」

「ありがとう寺石くん!寺石くんのおかげで僕も楽しかったよ。」

馬杉くんは、悔しさを一切見せずに小学生にしてものすごく大人な対応をしました。いろいろ完璧な馬杉くんが転んでしまったときには人間味を感じましたが・・・、やはり対応が完璧でしたね・・・。

さて、こんなシャトルランですが、私にとって、ある一つの点を除いて相性が最悪でした。

その一つの点とは、流れる音楽です。単純な「ドレミファソラシド」「ドシラソファミレド」の繰り返しなのですが、聴いていて心地が良いものでした。テンションが上がりました。回数が増えるたびにだんだん速くなっていくところも好きでした。これはとてもマニアックなのですが、回数が増える時は「ポーン♪」という音が鳴るのですが、それに加えてレベルが上がって音楽が速くなる時は「ポロロン♪」と異なる音楽がなりますので心が躍りました。・・・当時小学生ながら、シャトルランの音楽に対してここまで好印象を抱くことができた子は、珍しいかもしれませんね。

・・・そして今思えば、あの音楽にワクワクしすぎたのもあって、張り切りすぎて体力を温存することがうまくできなかったかもしれません。

つまり音楽は楽しかったので、シャトルランはあの忌々しいドッジボールに比べると私にとってかなりの好印象でした。

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つづく

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