1288.【小説】或除者の独白 幼少期編 第20話
2025/03/20
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或除者の独白
幼少期編
第20話
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幼少期の私の特徴として、やはり「得体のしれない恥ずかしさ」によって自分の「好きなもの・こと」を表現できないことは特筆すべき点ですので改めて述べてみます。
例えば、学校で自分の好きな本を図書室で選んで、それを読んで感想を葉書ほどの大きさの紙にまとめてクラス全員が教室に展示する、という活動がありました。
・・・私は、どの本を選べば良いか困惑しました。今の私であれば、直感で面白そうだと思う本をさっと取ることができるのですが、当時の私は「得体のしれない恥ずかしさ」に溢れてしまって本を選ぶことができずまごまごしていました。
「おい真田!まだ選べてないのか?ちなみに俺は、『モンテジョバンニ冒険記』だ!」
寺石くんが、いつものように私をイジりました。寺石くんは、このように冒険もののお話をよく好んでいましたね。
「・・・真田くん、まだ選べていないのですか?早く選びなさい!」
血も涙もない当時の担任教師・坂村が私にそう言いました。私はふざけていたわけではないのです。「得体のしれない恥ずかしさ」によりどの本を選べばいいのかがわからなかっただけです。
やはりこういう教師は「先生」と呼ぶ気には全くなれません。当時の私のような子への理解に乏しい教師連中も、「先生」と呼ばれるから勘違いするところがあるのです。もちろん、私自身が尊敬できる方であれば「先生」と呼ぶのも躊躇はないのですが。
現在の私であればこのような多少の反骨精神が身についているのですが、当時の私は至極真面目でしたので次のように返答しました。
「先生、ごめんなさい・・・。」
「ほら、早くしなさい。みんな待っていますよ。」
そう言われても、どれを選べばいいのかがわかりませんでした。
「真田くん!ほらこれ。前読んだけど面白かったよ。」
そう笑顔で本を差し出してくれたのは、馬杉くんです。この子は本当にいい子でした。ちなみに『おしろのせいかつ』という中世ヨーロッパのお城が舞台のお話の本でした。
「・・・ありがとう。」
「さすが馬杉くん!それに引き換え真田くんは・・・。」
坂村の奴は、馬杉くんを褒めると同時に私に嫌味を言いました。教師も人間ですから、いろいろな奴がいます。当時の私はまだ幼く、社会のこともわかっていませんでしたからこんな奴でも「先生」と呼んで尊敬しなければならないという思い込みがありました。
今思い返すと、学校教師にもいろいろな人がいたなぁと思えます。もちろん尊敬できる方もいたのですが、坂村のような腹が立つ奴もいました。
今の時代、特に勉強は技術の進歩で自習でも学びやすくなりましたから、教師の方々は「勉強を教える」ことも大事なのですが、人間性がより大事だと私は考えます。今の子どもたちの中でも坂村のような教師に嫌な思いをさせられているかもしれない、と思うと悲しくなります。
・・・おっと、私の幼少期の話をするつもりが、私自身の思想も出てしまいましたね。まぁ、こういう時もあります。
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つづく
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