1284.【小説】或除者の独白 幼少期編 第18話
2025/03/18
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或除者の独白
幼少期編
第18話
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遠足も、私にとっては困った行事でしたね。
私は歩くことは子どもの頃から好きでしたので、目的地まで歩く分は大きな問題はありません。・・・、ただ他の子どもたちのように会話をすることはあまりなかったと思われます。
小学校のある学年で、同じクラスだった女の子の末本さんが後ろを歩いていました。
列で歩きますので、私は列を乱すまいと気をかけすぎるあまりに、よく後ろを振り返っておりました。
「・・・何?」
前から私がジロジロ見てくるので、末本さんが、不機嫌そうに私にそう言いました。
「・・・。」
それから、後ろを振り返ることをやめました。こういった細かい奇妙な挙動が、当時の私には少なからずあったことでしょう。
こうして目的地につきました。ここまでは良いのですが・・・問題はこれからです。
自由に座ってお弁当を食べるわけですが・・・、私には一緒にお弁当を食べる友達がいません。
どうすれば良いかわからなかった私は、とりあえず一人で座ってお弁当を食べようとしました。
「真田、一人で食べてるぞ!」
寺石くんが相変わらず、私をからかってきました。私は無視しました。
「真田くん!こっちおいでよ。」
こう声をかけてくれたのは、馬杉くんです。私のような子をも気にかけてくれた馬杉くんは、本当に人間性ができていましたね。顔立ちも整っており、みんなに慕われるような人でした。
こうして私は、馬杉くんがいる男子10人ほどのグループに入ってお弁当を食べました。
「馬杉と食う弁当、美味すぎ、ってか、ハハハ。」
相変わらず寺石の野郎が私をからかってきました。本当にどうしようもない奴でした。これでいて要領が良くてスポーツ万能なので、女子からは支持されていました。寺石は男女半々くらいのグループで食べていました。
「おい。」
滅多に怒らない温厚な馬杉くんが、低めの声でそう言いながら、寺石を睨みつけました。それから、寺石がからかってくることはその日の間だけながらありませんでした。
「・・・ありがとう。」
私は頑張ってお礼を言いました。
「真田くん、大丈夫かい?さぁ、食べよう!」
感情が豊かでなかった当時でさえ印象に残っている出来事です。今の私がこうされたら感動のあまり泣いてしまっていたかもしれません。それくらい心が温まりました。
その後も、馬杉くんのグループで一緒にお弁当を食べて、お菓子の交換なども楽しみました。
「ごちそうさまでした!」
食事の時間が終わったあとはグループも解散し、自由時間でスポーツなどを楽しむ人たちもいましたが、私は一人で公園内をうろついていました。この時は再び一人になったのですが、お弁当のときだけでも馬杉くんのところで食べることができて嬉しい思いをしました。
当時の私は一見、人を避けているように見えたかもしれません。しかし、当時から人と関わりたい気持ちはあったのです。
今の子どもたちでも、学校で浮いていていつも一人でいるような子がいるかもしれません。もちろん、中には本当に一人が好きな子もいるでしょう。しかし中には私のように、人と関わりたいけれどもどう関われば良いかがわからないという子もいるのです。
馬杉くん、そして今も各地の学校にいる馬杉くんのような子どもたちに感謝いたします。
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つづく
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