山田隆一公式サイト

1280.【小説】或除者の独白 幼少期編 第16話

2025/03/16

...

或除者あるのけものの独白

幼少期編

第16話

...

私は幼少期、2つの習い事をしていました。

私に相性が良かった習い事と、そうではなかった習い事、どちらの話を先に聞きたいですか?

そうではなかったほうから?ありがとうございます。それでは、そちらからお話しいたしましょう。

・・・私は、水泳の習い事をしておりました。これまでのお話しをお聞きいただいた皆さまにはよ〜くお察しのことでしょうが、私は泳げるようにはなりませんでした。

ご覧のように私は背が高いです。190cm近くあります。幼少期もクラスの中で最も背が高いことがほとんどで、いわゆる「前にならえ」の際は身長順に並びますから一番後ろにいたことを覚えております。先頭の、腰に手を当てている子にとって最も遠い位置ですね。

こんな私が泳げなかったのです。大きなカナヅチですね。背が高いので、いつも初めて人に会う際は「なにかスポーツをやってるんですか?」などと聞かれます。やってないのです。何も。一般的に、背が高いとスポーツが得意だと思われる傾向にあるそうですが、私はむしろ、その真逆です。スポーツ万能の対極にいます。人を見た目だけで判断するのは良くない、とは言いますが、それは私の場合にも当てはまります。

・・・とは言いますものの、一般的に「背が高いとスポーツが得意」というイメージは覆りませんので、現在は「スポーツが得意に見えるでしょう?それが全然なんです。」などと会話のネタにすることを心がけています。

さて、本題の水泳の話に戻ります。幼少期の私は特に動きがぎこちなく、泳ぐ際の動作もうまくできませんでした。例えば、クロールの動きがうまくできず、犬かきのような泳ぎ方になっていました。やはり、足をつかずに端から端まで泳ぐことはできませんでした。

奇妙な泳ぎ方でしたから、それを見て笑う者もいたことでしょう。当時の私はいろいろと笑われまくっていましたので、それをいちいち覚えていません。

こんな私ですから、学校の水泳の授業でも奇妙な泳ぎ方をしておりました。これに加えて水泳の習い事にも行っていたにもかかわらず、うまく泳げるようにはなりませんでした。

要領の良い寺石くんや馬杉くんといった子たちは、水泳の授業だけでかなり上手に泳げるようになっていました。私は表情にはうまく出せませんでしたが、劣等感でいっぱいでした。現在であれば「自分は自分、他人は他人」と受け入れて劣等感はないのですが。

「おい真田!お前、水泳の習い事にも行っているらしいじゃないか。それだのに泳げないのかい?」

寺石くんがいつものように私をからかいました。

「・・・。」

内面には悔しい気持ちがあった私ですが、やはり極端に無口でしたので何も言えませんでした。

「何事にも向き不向きがあるから、気にしなくていいよ。」

こう言ってくれたのは、馬杉くんです。馬杉くんは人柄までもができあがっていましたね。

「・・・ありがとう。」

私は、ぎこちない口調ながらもお礼を言いました。

「真田くんのペースでね。」

馬杉くんは笑顔でそう言って、その場から立ち去りました。

こうやって思い返すと、寺石くんみたいな腹が立つ子もいましたが、馬杉くんみたいにいい子もいましたね。あまり良い学校生活ではありませんでしたが、良いことも思い出すことができます。

...

つづく

...