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1265.【小説】或除者の独白 幼少期編 第9話

2025/03/09

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或除者あるのけものの独白

幼少期編

第9話

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学校での掃除の時間も、私には困った時間でした。

私は集団で何かをやるときに、役割分担が曖昧だと何をすれば良いのかがわからない傾向にありました。大人になった現在はマシになっていると思われますが、この頃は特に具体的に何をすればよいかを指示されないと、うまく動くことができなかったのです。

掃除の時間は学校の昼休みの後に毎回ありましたが・・・、そんなにしょっちゅう掃除の時間があってもすぐに汚れるものではありません。明らかに汚れがあればやりやすいのですが・・・。

やることがなくなった他の子どもたちは、仲良く話をすることもありました。私は言うまでもなく、クラスで孤立していましたので一人で黙ってゴミも何も落ちていない場所をほうきで掃く動作などをしてやり過ごしたことを記憶しております。

今思えば・・・あの掃除の時間は「虚無」でしたね。もちろん明らかに汚れている場所などがあればやりやすいのですが・・・、そうでなければ指示でもされない限り何をすべきかがわかりませんでした。

学校や学年によっては、掃除の時間の間にBGMが流れていたことも思い出します。童謡が流れていることもあれば、あれは教員の方によるオリジナルソングでしょうか・・・、現在調べても音源が出てこないトイレのスリッパを並べることを啓発した楽曲も流れていました。

当時の私はほぼ無表情でしたが、音楽には関心がありましたのでこのようなBGMを楽しんでいたことを思い出します。

クラスメイトと会話をすることがほとんどなかった私にとって、一人でほうきを持ってうろうろとする掃除の時間はなんというか、シュールな時間でしたね。

皆さまが子どもだった頃も、クラスに一人でぽつんといる子がいたかもしれません。その子のような子が、当時の私なのです。

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つづく

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