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1251.【小説】或除者の独白 幼少期編 第3話

2025/03/03

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或除者あるのけものの独白

第3話

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私は特に幼少期には、「人に合わせる」ことがどうしてもうまくできませんでした。

学校では、どうしても集団生活となりますからしばしば「人に合わせる」ことが求められます。

例えば、体育の授業で「集団行動」という名のもとに笛の音とともに集団で同じ動きをする活動がありました。「集団行動」・・・、私が最も嫌悪する四字熟語の一つです。

私は動きが鈍く、笛の音が鳴ってから動くまでに時間がかかってしまうことがありました。

「おい真田!何をやっているんだ!」

まるで悪代官や悪徳政治家のような面をした心無い体育教師が、学年全体合同の授業で私を名指しで大声で叱ったのです。

私は決して怠けていたわけでも、ふざけていたわけでもありません。ちゃんとやろうと思っていても、うまく動くことができなかったのです。

私の普段の態度は至極真面目で、規律を守る傾向にありました。所謂いわゆる「やんちゃ」「不良」と呼ばれるタイプとは正反対です。そんな私だのに、「集団行動」となるとうまく動けなかったのです。

この屈辱、この口惜くやしさ、わかりますか?これは実際に当人の立場にならないとなかなかわからないものかと思われますが、こうやって私が語ることで、こういった子どももいることを皆さまに知っていただきたいのです。

今の私はこの当時よりは「人に合わせる」ことはできるようになってきたかもしれません。

しかし、現在でも平均より著しく「人に合わせる」ことが得意ではないと思われます。一人でいろいろと行動するほうがよくできるのです。

ただ誤解しないでいただきたいのは、「人に合わせる」ことが苦手だからといって、「人を避けている」わけではないということです。

口数が極端に少なかった当時の私さえ、「人と関わりたい」「仲良くしたい」という気持ちはありました。

今の私も一見冷たく、人を避けているように思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いろいろな人と関わり、いろいろな人を知ることには強い関心があるのです。

ただ私も人間ですから関わりたい人、そうでない人の好みはありますが・・・、会場の皆さま、笑いたくなったらどうか、お気になさらず大声で私を笑ってください。私はこう見えても、人を笑わせる、喜ばせることが好きなのです。

これからも時々ユーモアを交えながら、私の幼少期のことを中心にいろいろと語っていければと思います。

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つづく

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