1205.【小説】魔法のスプリッツ 第10話
2025/02/10
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魔法のスプリッツ
第10話
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ベアトリーチェは、サンタ・マルゲリータ広場の近くに住んでいる10歳の女の子である。
今日も、幼馴染で同い年の男の子・ロベルトと一緒に遊んでいる。
「おい、ビートライス!何を描いているんだい?」
「ビートライスはやめてよ!」
ビートライスとは、ベアトリーチェの名前の文字の綴り(Beatrice)を見るとピンと来る人もいるかもしれない。この綴りだと、英語のように読むと「ビートライス」とも読める。ロベルトが学校で少し英語に触れる機会があったので英語の発音を知ったのだ。
「ごめん、ベアトリーチェ!何を描いているんだい?」
「サン・マルコ広場よ。」
ベアトリーチェは絵を描くことが好きだ。今日もタブレットの画面に描いている。ヴェネツィアは実に歴史的な街で、その建物や風景は数百年前と大きく変化はないのだが、こうやってスマートフォンやタブレットなどを子どもも使いこなす時代となった現代とこの歴史的風景が混じり合うのも味わい深い。
「きれいな青空を描くね。」
「あら、ありがとう。」
サン・マルコ広場は、ヴェネツィアで最も主要な広場である。もちろん長い歴史を持つ広場で、あのナポレオンも「世界一美しい広場」と絶賛したことが知られている。
「う〜ん、床をどうやって描こうかしら。」
「休憩してみてはどうだい?」
「それがいいわね。」
二人は地元住民の憩いの場『マリオ・エ・ルイージ』に入っていった。
「チャオ、ベアトリーチェ!ロベルトも一緒だね。」
赤い格好のルイージが迎え入れた。
「チャオ、ルイージ!マルゲリータを食べに来たよ!」
ベアトリーチェは、ここのピッツァ・マルゲリータが大好きである。
「最近人気のこれ、飲んでみないかい?サービスするよ。」
後から出てきたマリオが、魔法のスプリッツをおすすめした。もちろん二人は子どもなのでソフトドリンク版である。
「へぇ、子どもでも飲めるソフトドリンク版のスプリッツがあるんだね!」
ロベルトが興味を持った。
「最近スプリッツの売り上げがすごいから、子どもでも飲めるソフトドリンク版をつくってみたんだよ。」
「じゃあ、それもいただくわ。」
しばらくするとソフトドリンク版スプリッツとピッツァ・マルゲリータが運ばれてきた。二人はあっという間に完食した。
「ああ・・・おいしかったわ。」
「この飲み物は、ピッツァと本当に合うね!」
二人は満足したようだ。
「また来てね!」
マリオとルイージは、笑顔で二人を見送った。
「あ、こうすればいいじゃない!」
店を出ると、すぐにタブレットを取り出したベアトリーチェはあっという間に床を描きあげた。
「うわ、すぐに描いた!すごいねベアトリーチェ!」
「私もびっくりしたわ。あの飲み物のおかげかしら。」
「さすが魔法のスプリッツと呼ばれるだけあるね!大人になったらソフトドリンクじゃないのも飲んでみたいけど、その時にもまだ店はあるかなぁ。」
二人は引き続き、夕焼けがきれいな放課後を楽しむのであった。
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つづく
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