1197.【小説】魔法のスプリッツ 第6話
2025/02/06
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魔法のスプリッツ
第6話
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ヴェネツィアの夕焼けは、ヴェネツィアならではである。
それはどの街にでも言えることではあるが、ヴェネツィアの夕焼けは建物の色合いと非常に調和しており、格別なのである。
そんなヴェネツィアの夕暮れを、大学の授業を終えたマルコとミケーレは歩いていく。
「僕、スプリッツ飲んだことないんだけど、大丈夫かな?」
「大丈夫さ。街を歩けば、いつもみんな飲んでいるだろう?ただ、口に合うかは飲んでみないとわからないがな。」
飲める歳になっても、一滴たりともお酒を飲んだことがなかったマルコは不安な気持ちもある。しかし、なぜか今日はスプリッツに惹かれてしまい、ミケーレにその話題を持ちかけてしまった。こうなってしまったのは、自分でも驚きである。
「夕方のスプリッツはもっときれいだね。」
「まさに空の色と同じような色だからな。」
使用するリキュールにもよるのだが、一般的にスプリッツの色は赤が強めのオレンジ色をしている。まるで夕焼け空のようである。
「おお、ミケーレ!夕焼けが映る川も、まるでスプリッツ色だ!」
「マルコは、まるで子どもみたいでかわいいやつだな。」
こうやって楽しく会話をしながら、日が沈みゆく水の都を二人は歩いていく。
すっかり街灯が目立つようになってきた。
「あれ、ここはカンポじゃないか?」
二人は通称「カンポ」のサンタ・マルゲリータ広場に到着した。
「おう、おすすめの店はここにあるんだ。」
「意外とよく通る場所にあるもんだね。」
やがて、その店の前に着いた。
『マリオ・エ・ルイージ』という名前だ。日本語にすると「マリオとルイージ」であり、日本発祥の某世界的ゲームのキャラクターを連想させてしまうが、イタリアではよくある男性名なのだ。
「よし、マルコ!アンディアーモ!」
こうして二人は、お店の中に入っていった。
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つづく
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