1195.【小説】魔法のスプリッツ 第5話
2025/02/05
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魔法のスプリッツ
第5話
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マルコは、ミケーレと一緒に授業が行われる講堂へ入った。
その刹那、先ほどまでは笑顔で会話をしていた二人の表情が激変した。
あたりを見回してみると、この講堂にいるほとんどの学生の表情が真剣である。
「マルコ、お前は大丈夫だよな?」
「ど・・・どうだろう。ミケーレは?」
「俺は大丈夫だ、問題ないよ。」
何の話をしているかというと、シモーネ・ジョルダーノ教授による今回の授業では、今回中間テストが開催されるのだ。
「デモーネ、今回はどんな問題を出してくるだろうな。」
「それは誰にもわからないよ。」
ジョルダーノ教授は、学生の間では彼のファーストネーム「シモーネ」をもじって「デモーネ」と呼ばれている。デモーネ(demone)とは英語にするとデーモン(demon)、つまり悪魔という意味である。それほど、学生たちに恐れられている教授である。
「今から、試験用紙を配る。カンニングなんかするんじゃないぞ。その瞬間、お前の単位はない。」
ジョルダーノ教授は厳しい。鬼の形相で中間テストを進行している。
「よし、始めっ!」
試験が始まった。試験中は、ジョルダーノ教授が目を光らせて学生たちを監視している。
ほとんどの学生は真剣な面持ちをしているのだが、中には挑発的に常に笑顔を見せている学生もいる。
「終わりっ!問題の難しさに対する抗議は一切受け付けない。以上。」
試験が終わった。
「うわぁ・・・難しかったね、ミケーレ。」
「いやぁ・・・ちょっとこれは・・・。厳しいかもなぁ。」
二人が講堂から出ると、ジョルダーノ教授も講堂から出た。
講堂から出た瞬間、ジョルダーノ教授の表情が柔らかくなった。
「あんな表情のデモーネ、初めて見たぞ!授業以外じゃあんな感じなのか?」
「授業以外じゃシモーネに戻るのかもね。」
「これで今日、大学でやることはいろんな意味で終わりだ。さっき話した俺のおすすめのスプリッツ飲める店、行かないか?」
「うん、行こう。」
マルコとミケーレは、海にも映る夕焼けのきれいなヴェネツィアの街並みを歩き出すのであった。
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つづく
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