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1191.【小説】魔法のスプリッツ 第3話

2025/02/03

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魔法のスプリッツ

第3話

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マルコは、ザッテレと呼ばれる停留所から大学へ向かって歩いていく。

ちなみに、ザッテレとはイタリア語で「いかだ」という意味だ。今はヴァポレットなどの水上バスをはじめとするボートがよく見られるこの海だが、大昔にはいかだがいっぱい浮かんでいたのかな、と想像させる地名である。

マルコが住むジュデッカ島でもそうなのだが、本島に来ると更に、ヴェネツィアの古い建築物たちが圧巻の光景である。数百年前と大きくは変わらない光景が、観光客たちを毎日感動させている。

建物はもちろん、床の石畳や壁のレンガ造りも非常に雰囲気がある。その中に、運河が様々な形に張り巡らされており、それぞれに橋が架かっている。そもそもこの島自体はるか昔に人工的につくられたものであり、裏路地に入ると迷路のように入り組んでいることもあり、歩いているだけで非常に興味深い街並みなのである。

「乾杯!」

やはり、本島の飲食店でもスプリッツを片手に様々な話を繰り広げている人々がいる。笑顔で楽しそうである。

「うん、やっぱり毎朝歩くと気持ちいいなぁ!」

ヴァポレットにずっと乗っていると楽に大学の近くの停留所まで行くことができるのだが、歩くことが好きなマルコは本島に着くとすぐにヴァポレットを降りて大学まで歩くのである。

ヴァポレットは様々な停留所へ寄りながらゆっくり移動するので、ずっとヴァポレットに乗っていても歩いてもそれほど大学への到着時刻に大きな変化はない。それならいい運動になる上この美しい街並みを見ることができる徒歩をマルコは楽しんでいる。

しばらく歩くと、マルコはサンタ・マルゲリータ広場に到着した。

ここでは特に夜に、学生たちをはじめとした人々が集まって飲食を楽しんでいる。ヴェネツィアの言葉で広場は「カンポ(campo)」という単語である。ヴェネツィアには広場がいっぱいあるのだが、学生たちは特にこのカンポ・サンタ・マルゲリータを単にカンポと呼んでいる。

夜には大きく賑わうのだが、まだ朝なので比較的静かである。人より鳩が多いかもしれない。

「チャオ、鳩さん!」

マルコは鳩が好きである。笑顔で鳩に挨拶をした。

「チャオ、鳩ちゃん!」

近くにいた子どもも、鳩に挨拶をしている。

子どもと同じことをしたことを微笑ましく思ったマルコは、更に大学へ向かって歩いていくのであった。

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つづく

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