1189.【小説】魔法のスプリッツ 第2話
2025/02/02
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魔法のスプリッツ
第2話
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マルコは、ヴァポレットと呼ばれる水上バスの停留所へ向けて海沿いを歩いている。
特に海沿いにある飲食店では、スプリッツを飲んでいる人が多い。
中には朝から一杯やって授業を受けにくるクレイジーな学生もいるかもしれないが、マルコは無論飲まない。そもそも、マルコはお酒が飲める年齢になっても一滴たりとも飲んだことがないのだ。
やがて、パランカと呼ばれる停留所に着いた。
\ピッ!/
ヴァポレットの定期券をタッチする。
「チャオ、マルコ!」
声をかけたのはジュリアで、同じ大学に通う女性だ。
「チャオ、ジュリア!今日は珍しく早起きだね。」
ジュリアはよく寝坊しがちだ。授業が早くに始まる日はギリギリに到着するか、それとも遅刻してしまう。しかし、「狼教官」と呼ばれているガンディーニ教授は遅刻を一切認めないのでその日は気合を入れて早起きする。
「だって、今日は狼の日だもん。」
「やっぱりそうか!学部が違う僕でも知ってるくらい有名な先生だからね。」
マルコとジュリアは住んでいる学生寮が同じだけで、学部が異なりキャンパスも別々なので大学で会うことはほとんどない。だがこうやって度々ヴァポレットの停留所で会うことがあるのでその時は会話をする。
「ヴァポレットが来たよ。乗ろう!」
マルコたちは本島から離れたジュデッカ島に住んでいるので、大学へ通うには毎回ヴァポレットに乗らなければならない。
こうして、二人はヴァポレットに乗り込んだ。座れる席のある内側に入ることもできるのだが、マルコは外側にいて風を感じながら乗るのが好きだ。同じく、外側にも様々な人々が会話を繰り広げながら乗っている。
ペットも乗り込むことができるので、中には大きな犬を引き連れて乗っている人もいる。マルコは犬嫌いなので、そういうときは素早く犬から離れる。
「今日も晴れてて気持ちがいいね。」
「私は無理やり早起きしたから・・・そうでもないかも。」
こういった会話を繰り広げながら、ヴァポレットはジュデッカ島を離れ、本島へ向かっていく。海の上で、どんどん近づいていく本島に、マルコは毎回ワクワクしていた。
「ザッテレ!ザッテレ!」
乗組員が次の停留所の名前を連呼する。
「Prossima fermata, Zattere.」(次の停留所は、ザッテレです。)
まずはイタリア語で女性の音声が流れる。
「Next stop, Zattere.(次の停留所は、ザッテレです。)」
そして次に英語で流れる。イタリア語音声と同じ人、つまりイタリア人女性による音声なのでイタリアのアクセントがある英語であり味わい深い。
「それじゃジュリア、チャオ!」
「また今度ね。チャオ、マルコ!」
マルコはザッテレ停留所でヴァポレットから降りた。ジュリアは他の停留所で降りるようだ。
「よし、今日も歩くか!」
マルコは、大学まで歩いていくのであった。
...
つづく
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