1567.【映画『国宝』感想】歌舞伎の場面は鳥肌の連続!長崎生まれの少年が歌舞伎役者として生きていく物語。
2025/09/04
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今年の6月6日に公開され8月末時点で興行収入124億円の大ヒットを記録している、李相日監督・吉沢亮主演の映画『国宝』。
公開から3ヶ月が経過しようとしているこのタイミングで鑑賞いたしました。
『国宝』予告編
※これからは映画の内容について執筆いたします。これからご覧になる方でネタバレをご覧になりたくない方はご注意ください。
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歌舞伎を題材とした作品
長崎市出身の作家・吉田修一による小説を原作としたこちらの作品は、歌舞伎を題材にしております。歌舞伎についてよく知らない私にとって、歌舞伎の世界へ誘ってくれるような作品になりました。
原作者が長崎の方ということもあり、冒頭のシーンが長崎から始まりました。料亭では長崎の民謡『長崎ぶらぶら節』も演奏されておりました。長崎市民の私にとっては親しみを感じる場面となりました。
この長崎の喜久雄という少年が歌舞伎役者・花井半二郎に引き取られて歌舞伎の世界に入っていく物語です。
半二郎の息子・俊介(花井半弥)と喜久雄の関係・・・。半二郎が実の子である俊介以上に才能を見出して熱心に喜久雄を稽古しましたが、いくら喜久雄に芸の才能があっても歌舞伎役者としての血筋を持つ俊介が優遇されてしまう・・・。伝統的な歌舞伎の世界の雰囲気を少し感じ取ることができました。
才能はあるものの血筋がない喜久雄と、血筋はあるものの喜久雄に比べて芸では劣っていると感じた俊介・・・。両者の葛藤には複雑なものがありますね。喜久雄の芸に圧倒されて観客席を途中退室した俊介の場面は心に来るものがありました。
映画鑑賞後に様々な方々の感想を拝見しましたが、喜久雄の長崎時代からの幼馴染である春江が喜久雄と一緒にならず俊介と家庭を築いたことはなかなか納得がいかない展開ですよね。春江は幼馴染との関係よりも歌舞伎役者としての血筋を選んだとも言える展開です。
このように様々な人間模様が描かれている作品で、「喜久雄と俊介が実の兄弟だったら」「春江が喜久雄と一緒になっていたら」などと様々な「もしも」を考えることができます。
そして、個人的には最後のほうのインタビューのシーンが印象的でした。歌舞伎役者として注目を浴びた時期もあれば、全くそうではなくうまくいかなかった時期もあった喜久雄。
そんな「山あり谷あり」の人生を送ってきた喜久雄であるとここまで映画を観てきた人であればわかるのですが、インタビュアーは「順風満帆の歌舞伎人生でしたね」といった旨のことを発言しました。心の中で「何を言っているんだこいつ!」と思ってしまいました。しかし、過去にいろいろあっても人は忘れていくものです。どうしても「今」を基準に考えてしまいます。そんなインタビュアーの「順風満帆」発言に妙なリアリティを感じてしまいました。
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鳥肌の連続!歌舞伎シーン
劇中に何度も流れる歌舞伎の場面はそのたびに鳥肌が立ちました。映画館の大迫力で観る迫真の歌舞伎シーンに圧倒されっぱなしでした。演じた皆さまはこの映画のために相当な量の歌舞伎の稽古を積んだそうです。
『関の扉』『連獅子』『二人藤娘』『二人道成寺』『曽根崎心中』『鷺娘』の演目が劇中で披露されたそうです。歌舞伎についてあまり知らなかった私はこれらの演目を映画として初めて拝見いたしました。歌舞伎通の方々にはよく知られた演目かもしれません。今後これらの演目の場面を拝見することがあれば、『国宝』で出てきた場面だ!と思い出すかもしれませんね。
『国宝』で歌舞伎に触れることにより、実際に歌舞伎を観に行きたいと思った人々は少なくないことでしょう。私もその一人です。いつか生でも日本の伝統芸能に触れてみたい、そう思わせてくれる映画でした。
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主題歌『Luminance』
最後に、『国宝』の主題歌『Luminance』のMVをご紹介いたします。映画本編の様々な場面が流れるMVとなっており、映画館で感じた感動を思いだすことができます。
この楽曲は本編ではエンドロールで流れたのですが、美しさの塊のような楽曲で本編の歌舞伎シーンのような鳥肌をここでも引き起こさせてくださいました。
映画に関わった皆さま、ありがとうございました。
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