山田隆一公式サイト

1329.【エッセイ】『さかさ王者』

2025/04/09

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『さかさ王者』

「さかさ王者」とは、たった今私が思いついた単語である。

さかさとは、文字通り逆のことである。つまり・・・、王者の反対。最下位のことである。

私は学校で体育の授業との相性が全く良くなかった。体育の大会があると、いつも最下位だった。

例えば、マラソン大会で最下位となると・・・当時の私は恥ずかしく思った。

一番最後にゴールすると・・・すでにゴールした大勢の人々が私に対して声援を送る。・・・善意による声援だったとしても、当時の私にとっては屈辱的であった。

しかし、今であれば肯定的に考えることができる。そう、「さかさ王者」である。

たとえ最下位でゴールしても、なにか罰があるわけではない。むしろ、他の順位ではあまり味わえない声援などを受けることができる。

「最下位」「ビリ」というとあまり良い印象を与えない言葉であるが、「さかさ王者」という言葉を使ってみると最下位でいることも悪くないように錯覚する。

このように現在は言葉遊びも交えた「ポジティブな言い換え」をすることができるのだが・・・、子どもの頃にこの域に到達するのは私は難しかった。仮にタイムスリップして当時子どもの私に「さかさ王者」の概念を説明しても理解できないことだろう。

・・・、造語を作って、そのことについて語るのも悪くないものである。

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お読みいただき、ありがとうございました。