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1319.【名作文学紹介】中原中也『宿酔』【千の天使が バスケットボールする。】

2025/04/04

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※本記事は文学作品に対する個人的考察の記事です。作品に対する解釈は人それぞれであり、私の解釈が正しいものとは限りません。一意見としてご覧いただけると幸いです。

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名作文学紹介

中原中也『宿酔』

(『山羊の歌』より)

本日から、様々な文学作品を紹介する記事もいろいろと書いていこうと思います。

今回は、中原中也の『宿酔』をご紹介いたします。こちらは、中也の詩集『山羊の歌』に収録されている一遍の詩です。

既に中也作品の著作権は消滅していますので、こちらでも全文をご紹介いたします。

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『宿酔』

中原中也

 

朝、鈍い日が照つてて

風がある。

千の天使が

バスケットボールする。

 

私は目をつむる、

かなしい酔ひだ。

もう不用になつたストーヴが

白つぽくびてゐる。

 

朝、鈍い日が照つてて

風がある。

千の天使が

バスケットボールする。

 

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以上が、『宿酔』の全文です。

私がYouTubeで朗読した音声もございます。よろしければ、こちらから耳でもお楽しみください。

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「宿酔」の意味

この詩の題名となっている『宿酔』という言葉は、「前日に飲んだ酒の酔いが次の日まで持ち越されていること」といった意味合いです。

つまり、いわゆる「二日酔い」のことなのですが、『宿酔』という言葉の読みも、「しゅくすい」とそのまま読む読み方と、「ふつかよい」と当て字をしたような読み方の2種類があります。

この詩の題名『宿酔』には振り仮名がありませんので、「しゅくすい」と読むか「ふつかよい」と読むかは読者に委ねられております。私はそのまま「しゅくすい」と読みました。

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『宿酔』の魅力

この『宿酔』の詩からは、いわゆる二日酔いの際の頭がうまく回っていない様子が情景とともに表現されていることを感じます。

夢か現かわからない状態ですから、「千の天使」が「バスケットボール」をする様子が思い浮かんでいるのでしょう。

たった12行の短い詩ながら、その様子を自分なりに感じ取ることができます。例えば、二日酔いの際のむなしさが「白つぽくびてゐる」ストーヴからも伝わってくる気がします。

二日酔いの際の頭の中を渦巻く感情をこのように印象に強く残るほど文章化できていることこそ、この詩『宿酔』が現代でも愛されている所以なのかもしれません。

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私が『宿酔』を知ったきっかけ

私がこの詩を知ったきっかけは、こちらの楽曲です。

和田昌昭氏が中也の詩『宿酔』に自らで曲をつけて歌った動画です。耳に残るアレンジとメロディにより、愛着を持って『宿酔』を知ることができました。

本記事を執筆するにあたって、再びこちらの楽曲を聴いておりますが、ついつい体を動かしてしまうノリノリなリズムに再び虜となっております。

こちらは、現在は大阪大学の名誉教授である和田氏が当時教授だった際にライブ演奏した際の『宿酔』です。ベースの低音とともに弾き語る、こちらのアレンジも好きです。

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おわりに

今回は、中原中也の詩『宿酔』をご紹介いたしました。

短い言葉でその言葉以上といえる様々なことを想像させる詩の世界も、奥が深いものですね。

これからも、少しずつ様々な文学作品のことについて書いていければと思います。

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お読みいただき、ありがとうございました。